強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
獣のごとく
しばらく車を走らせ行きついた先は、ごく普通の住宅街だった。
二階建の建坪四〇平米前後じゃないかと思われる新しい家が並んでいる。
その中に、単身者用と思われる四階建てのアパートがあった。
駐車場には篤志さんのものと思われる、庶民的なアパートには不似合いな黒塗りの高級車が停まっていた。
「あそこだな」
と、悠は断定し、歩いて五分ほどの書店の駐車場に車を停めた。
あれはどう見ても、篤志さんの自宅じゃないし、お店でもない。怪しい。
「さあ、行くよ。現場を押さえなきゃ」
悠は私の意見も聞かず、車を降りてしまう。
一人で車に置いていかれるのも嫌なので、仕方なく一緒についていった。
どうしてこんな探偵のような真似をしなきゃいけないの?
と思いながら、こそこそとアパートの一階の角部屋のベランダの前で身をかがめた。
「いるいる。あいつと女のにおいだ」
悠が鼻をふんふんと鳴らす。
臭いはわからないけど、カーテンの向こうにオレンジ色っぽい光が灯っているのが見える。誰かがいるという証拠だ。