強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


「大西、警護には税金が使われるんだぞ」


高浜さんがたしなめるように言う。


「総理の給料だって、税金ですよ。経費で下りない分は、あちらに請求しましょう」

「何を言ってるんだ」


高浜さんが真面目に返すのを聞いて、悠はくすりと笑った。


「じゃあ、常識の範囲内で泊まれるホテルに行こうか。気分転換って大事だよ」


たしかに、気分転換はしたいけど。


「なら、お前の部屋はどうだ大西」

「えっ?」

「俺も経験があるが、さすがにSPの自宅まではテロリストはやってこなかったぞ」


つまり、高浜さんは以前、自宅に警護対象者さんを泊めていたことがあるってことだよね。

悠の自宅って、どんなふうなんだろう。植物がいっぱいあるって言ってたっけ。


「そうでしたね。でも、うちはちょっと」


ふと見た横顔は、困ったように眉が下がっていた。

悠のこんな表情、見たことない。

なんでも笑って受け入れてくれそうな彼が、自宅にマルタイを入れることは拒否……。

心のどこかで、ちょっとがっかりしている自分がいた。


< 72 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop