隣の彼は契約者

02*2



 確かに利用しているサイトでは、出版社から声がかかって書籍になった作品が何冊もある。でも、その打診が自分にくるとは思わなかったし、新手の詐欺も疑った。
 記載されていた出版社が自分も持っている本を出しているところだと知るまでは。


「でもすごいじゃない! 本だよ本!」
「う、うん……でも、私のは趣味だし」
「それでもこんな機会絶対にないって! 絵は誰かな? あの会社だと明星 カオリさんか、みやび ふみさんか……」


 読者でもある美鶴ちゃんは自分のことのように喜んでくれる。
 でも私は苦笑を返すしかない。

 だって私は趣味で書いているだけ。
 書き方だって他の人を真似てるだけで、プロのような知識もなければプロになりたいと思っていたわけじゃない。ただの本好き。それだけだ。

 そんな私がこんな夢のような話を受けていいのか正直悩む。
 それに、この話は……。


「ねえ、まひろ」


 考えすぎていたのか、空耳のようにも聞こえた。
 でも、伏せていた顔を上げると頬杖ついた美鶴ちゃんが微笑んでいた。


「私ね『隣の彼との秘密』好きだよ。ツンデレ主人公は可愛いし、雅はカッコ良くて頼りになるし……続き楽しみにしてるんだ」


 突然の告白に私の顔は真っ赤になるが『あ、ありがとう』と、なんとか声を振り絞った。美鶴ちゃんは手に持ったカップをゆっくりと口に運ぶ。



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