隣の彼は契約者

02*6



 呆然としていると肩に手が乗り我に返る。
 ニコニコと優しい笑みを向ける課長だ。

 慌てて席に向かい鞄を下ろすと、コッソリと携帯を確認する。
 メールは出版社からで、こんな私のでいいのかと不安要素も書いていたせいか『良ければ直にお話して考えてみませんか』というものだった。

 はじめてのことで右も左もわからない私にはありがたい話で、あとで返事をしようと鞄に仕舞う。と、デスクに覚えのない書類。でも、黄色の付箋には一言『よろしく』。

 当然『宿題』と言っていた相沢先輩からだろう。
 筆跡だけでもわかる付箋の端にはちょっと太っちょで糸目。眼鏡をかけた鳥の絵があって、なんとなく先輩に似ていた。この付箋、どこで売ってるんだろ。


「チョコが好きだったり、意外と先輩可愛いな……」


 ぽつりと呟いた声は普通だったと思う。
 でも脳裏にさっきの情景が浮かぶと、頬に熱が集まるのがわかって両手で頬を覆った。

 もう、いったいなんなんだろ────。





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