星になれたら

弱い僕

「空ちゃんて、いたよね?あの…島根とかそっちのほうの。」


翌日の朝、夏休みなのにちゃんと朝食の席に起きてきた僕は母親に唐突に尋ねた。




「…鳥取よ!


空ちゃん、ああ。去年だったかしら?亡くなって…」



「うん、確かエイズ?」



「そうよ、外国に旅行行ったときに大ケガして…輸血用の血液から感染したんですって」


「…そう」



―僕の姪っ子にあたるその空ちゃんという女の子とは一度だけ会ったことがある。



まだ顔も知らないの空ちゃんのお見舞いとやらで…正直めんどくさいって思ったり。



病院のベッドに横たわる痩せ細った痛々しい姿に、何とも言えぬ恐怖を感じたことを今でも覚えている。



(ああ… この子はもう助からない。)



漠然と、しかし確かな真実として僕は直感した。




横になったまま目だけ動かして窓の方を見ている空ちゃんはふと言葉を発した。



だれに言うでもない、

静かで曖昧な言葉。




「お日さまになりたい



死んだ人は星になるっていうけど




空は夜が嫌いだから…」






その時、僕は自分の目の前にいる小さな小さな女の子がとてつもなく遠くにいるように見えた。


悟ってる、っていうのかな?


あきらめじゃなくて、受け入れてるって感じ…






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