俺に溺れとけよ

ライバルだから~紡side~

紡side


水の感触、音、プールの温度…

全てが好きだ。


これ以上愛せるものなんてないと思ってた…






「なんかスランプなんだって?」


スポーツクラブの休憩スペースで飲み物を飲んでいると、兄の務が俺にさり気なく聞いてきた。


大学生の務は東京の大学通っていて向こうで一人暮らしをしているのだが、

さっき突然俺が自主練していたスポーツクラブのプールに押しかけて来て、今一先ず休憩中だ。





「…誰から聞いたんだよ」

「誰からでもいーじゃん」


どうせ健だろ。

俺の友達で務と繋がってるの健くらいだからそれしか考えられないし…







「まあ…ちょっとね」

「ふーん…」


最近また俺の悪い癖が出始めてる。

悩み事があるとうまく泳げなくなるんだ…

自分でもわかってる。







「…美海ちゃんの事?」

「ぶっ」


思わず口に含んでいた飲み物を出しそうになると、務が楽しそうに笑った。
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