きみが望めば
「来てる!」
あたしはラファを掴む腕に力を込めた。
「大丈夫!はっ!」
ラファの選んだ馬は樹々が鬱蒼とした森をすいすい進んだ。いつの間にか追跡の姿は見えなくなり、周りはごつごつした岩肌と苔が生したような場所に変わっていた。

白くモヤがかかっているようだ。

「ここは?」
生温い空気。

周りを見渡していたラファが、ぎゅっとあたしを抱いた。
「大丈夫。」
ここがどこかなんて不安も感じさせない、金色の瞳の妖艶さにくらっとしてしまいそう。

「風呂に入りたいと言ってただろう?」
馬の歩みが止まった。
「お風呂?入れるの?」
くすっとラファが微笑んだ。

「ああ、そうらしい。よかったな。」
ぽんぽん、と頭を軽く撫で、ラファが先に馬から降りた。あたしが降りるのを受け止めてくれる。

降りたそこは、真っ白に湯気の昇る温泉だった。
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