きみが望めば
7.香り
あたしのどぎまぎした時間を破ってくれたのは白馬のいななきだった。

「主人の登場か?」
ラファが腰を上げた。
白馬のいる入り口のほうを見やり、あたしはほっとする気持ちを隠せなかった。
ラファをちらっと見ると、口元の端に笑みを浮かべていたようだった。だけどすぐにその笑みらしきものは消えて、表情は見えなくなった。

微笑みのソラとの違い。笑顔が見えないことかもしれない。
同じ顔だからちょっとは笑ってみたらいいのに、と心の中で思った。
途端、金色の瞳がじろっと睨むようだった。

やばっ、読まれちゃうんだった!

急いで入り口のほうへ小走りで逃げるあたし。
ラファにも心の中のつぶやきまで筒抜けなんだった。
もー、どうしたらいいのか!
早くハッピーエンドに到着して帰りたい!

後ろからラファがやってくる足音が聞こえていた。

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