きみが望めば
11.魅惑の香り
キラキラした靴、不思議な輝きを放つ玉、望む姿に変えてみせる姿見、羽毛のマント、ここには何でも揃えてあった。

「ぁー、莉乃ちゃん、ちゃんとひとりでもがんばろうとしてる。うんうん、ちゃんと受け止めたんだねー、ここが夢見る国だってこと。ぁ、ほらほら、アル王子のヒラヒラふりふりだったドレスシャツ!ふりふりが無くなってきてる!」
虹色に輝く玉に手を掲げていたレドが、大きな声を出す。
「これって王子が絵本咲希ちゃんの理想のタイプから、莉乃ちゃんの理想のタイプに変わってきてるってことだよね?ちょっと、莉乃ちゃん、ときめいちゃうんじゃない?」
斜め前に座った背中にがしがしと投げつけるように台詞を飛ばす。

「よかったじゃないか。莉乃が王子を射止めてハッピーエンド、そしたら莉乃は元の世界へ帰れる。俺たちの仕事はひとつ片付く。」

「お前さぁ、それでいいわけ?」

「何がいいたい。」

レドは虹色の玉の中に視線を戻す。

「お前さぁ、なんで莉乃ちゃんの傍に戻んないの?ガイドの仕事放棄なの?しかも、なんでラファのままなの?」

レドを振り返った瞳は金色だった。





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