大好きな君の嘘
不思議な男
「よおっ娘!俺の相手をして貰おうか!?」


町中の往来で、酒のにおいをぷんぷんさせ
一人浪士が娘の手を引く


「いややぁーー!!離して下さい!!」



その場にたくさん人がいたが
助けようとする男は、いなかった



「ちょっと、お兄さん?
その子の代わりにうちがお相手するえ?」



ニコリと笑いながら
町娘姿の君菊が割って入る



「ほお 別嬪だ」

「ほな、よろしゅう」



浪士と君菊が路地裏に消える



ドカッ



君菊が浪士の意識を奪ったとき

騒ぎを聞きつけて、土方が駆けつけた


「おめぇ……何やってんだよ」


「丁度ええとこにきはった
この人、奉行所にお願いします
ほな」


「待て!!君菊!!」

「あんさん声が大きいなぁ
町中で君菊って言わんといておくれやす
菊ちゃんて、呼ばれております」

「君菊!! 武術が少々出来るからって
一人でこんなことすんな!!」

ポカンと土方を見つめ、首を右に倒す

「なんで?」

「は?なんでって、危ねぇだろ!」

「土方はんの心配することやないやろ?」


まったく意味がわからないと

また、首を傾げ

君菊は、その場を去ることにした


(不思議な男……)


騒がしい後ろを少し振り返って

土方の姿を見た




(まぁ 悪い人ではないわね…)






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