秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
ライヴ
「いやだったらいやだって!」

私は、分厚い扉の前で、足を思いっきり踏ん張った。



「あんた、本当に往生際が悪いわね。
ここまで来て何言ってんの!?
さぁ、行くわよ!」

「やだったらやだーーー!」

「もうっ!いいかげんにしてよ!
さ、早く早く!もう始まっちゃう!」

「やだーーーーー」

私の絶叫を無視して、さゆみは、右手で扉を押し開け、左手で私をものすごい力でひっぱった。
私は転がるようにホールの中に入れられて…



「あ……」

荘厳なSEに乗せて、真っ暗なホールに急に色とりどりの光が満ち溢れ…ステージの後ろにはSSの大きな文字が輝く。
やがて、スポットライトがステージの上の人物を照らし出して…



「今日も燃え尽きるまで歌うぜーーーー!」



高く澄み切った金属のような声…
それに女性客の悲鳴にも似た歓声が応える。



ホールの中は激しい音と煌びやかな光の洪水で、私は眩暈がしそうになるのを懸命にこらえた。


< 1 / 204 >

この作品をシェア

pagetop