秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
仕上がりは順調だ。
オルガが気にしてるギターソロも申し分ない。



「なんだよ、オルガ…どこが気に食わないんだよ。」

「今ので良いと思うか?」

「あぁ…」

みんなが一斉に頷いた。
そんなわけで、明日はやっぱり新曲を披露することにした。



(なんとか今夜中に良いタイトルつけなきゃな。)







「じゃあ、明日な!」

「気合い入れて頑張ろうぜ!」

夜も更け、俺達は各々の家に戻った。



「おかえりなさい。」

「ただいま。」

いつものようにかおりが優しく出迎えてくれる。



「……また飲んでる……」

「少しだけよ。」

最近のかおりは、毎晩のように飲んで帰って来る。
酒を飲むこと自体には文句はないが、元々、それほど酒好きでもない
かおりだから気にかかるんだ。
本人は忙しさを発散するためだって言ってるけど…大丈夫なんだろうか?
帰って来るのも毎日遅いし、無理しすぎてなきゃ良いんだけど…



「何か食べる?」

「うん。軽く食べたい。」

「ちょっと待っててね。」

特に体調が悪そうな気配はない。
ただ…最近のかおりは時折すごく寂しそうな顔を見せる。
そのことが、俺は少し気にかかっていた。



思い当たることなんて何もない。
これから、結婚するってことで気持ちが少し不安定になってるんだろうか?
それとも、やっぱり仕事のこと?
レコード会社の人との話し合いが終わったら、かおりともゆっくり話をしよう。
食事の用意をしてくれるかおりの横顔を見ながら、俺はそんなことを考えていた。
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