秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
side かおり
(今日も最高だね…!)



声の調子は最高だ。
本人もそれに気付いてるのか、思いっきり声を出してる。



(瑠威…ノッてるね…)



きらびやかなライトの中で歌う瑠威は、まさに水を得た魚そのものだ。



(そう…瑠威の本当の居場所はここ…
だから、邪魔はしちゃいけない…)



激しいリズムの波に揉まれているうちに、私は瑠威と出会った頃のことを思い出していた。



(初めて会った時は、あんた、かなりツッパってたよね。)



よく店に来てたオルガがバンドをやってるって話を聞いて…
その衣装を縫ってくれる人を探してるって、オルガが言って…
縫い物なら得意だし、ヴィジュアル系の衣装なんて縫ったことがなかったから面白そうだなって思って、私は簡単に引き受けた。
最初はオルガのものだけだったけど、そのうちに他のメンバーのも頼みたいって言われて…
ある時、私は彼らの練習スタジオに向かった。



「あ、どうも。」


スタジオのベンチに座ってた瑠威は、煙草をふかしながら、たった一言そう言った。
あまりにも素っ気なくて…いつも愛想の良いオルガとは違い過ぎて、ちょっと嫌な奴だって思った程だった。
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