秘密のカレはV(ヴィジュアル)系




「あ、瑠威……
ごはん、食べる?」

やっぱり親子だな。
望結がかおりと同じことを言った。



「じゃ、ちょっとだけ…」

俺が食べないと、きっとかおりも心配するから、一応食べておくことにした。



「ママの具合はどう?」

鍋を火にかけながら、望結が訊ねた。



「うん、本人は大したことないって言ってる。
ま、確かに熱はないんだけどな。」

「そっか、じゃあ、大丈夫なのかな?
今は寝てるの?」

「うん、俺がいると眠れないって追い出された。」

「そうなんだ…」

望結はくすっと笑った。



「……今日のライブはどうだったの?」

「バッチリ!…と、言いたいとこだけど…」

「良くなかったの?」

「いや…かおりが来てなかったから寂しかっただけ。」

「……はいはい、ご馳走様。」

望結の呆れ顔に、思わず笑みがこぼれた。



「なぁ、望結も一回くらい見に来いよ。」

「や、やだよ。なんか怖いし。」

「何も怖くないって。
かおりと一緒に来れば心配ないだろ。」

「あ…あのね…
私の友達の家、喫茶店やってるんだけど…クロウさんがよく来てたんだって。
そ、それに、瑠威も来たって言ってたよ。」

「喫茶店?どこの?」

「えっと…北岡町の……」



(北岡町…?)



俺は記憶の糸を手繰り続けた。
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