秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
遅い夕飯を食べ終わり、望結と他愛ない会話を交わしてから、俺は寝室に戻った。
かおりはベッドで本を読んでいた。



「起きてたのか…早く寝ないとだめじゃないか。」

「うん…でも、なんだか眠れなくてね…」

そう言ってかおりは本をぱたんと閉じた。



「おでん、食べた?」

「うん。サラダとごはんも二杯。」

「おでんとサラダ?」

呆れたようなかおりの声…



「望結にはいつも生野菜を食べさせられるんだ。」

話しながら着替えて、かおりの隣にそっと潜り込む。



「今日のライブはどうだった?」

「うん、全力で歌えた。」

「そう…」

やっぱり、まだ具合が悪いのか、かおりの表情も声もいつもより元気がない。



「望結…俺のライブの事、何か言ってた?」

「えっ!?どういうこと?」

かおりが酷く驚いたような顔をしたから、俺の方が戸惑った。



「どういうって……望結、いくら誘ってもライブに来ないから…
やっぱり俺達みたいなタイプは嫌いなのかなって思って…」

「あ…あぁ……
たぶん……嫌ってはいないと思う。」

「そうかな?でも、今日も誘ったけどいやだって言われた。
あ、そういえば、ファンの子からのプレゼントや手紙のこと、何か話した?」

「えっ?どうして?」

「うん…手紙は読んでるのかとか聞かれたから…」

かおりは何も言わなかった。
ただ、何かを考えるように遠い目をして黙り込んでいた。
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