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「クリス君か。まぁ…なんと言うか…陛下想いだな」


ルーシャを横目にジェンはほくそ笑む。


「とにかく、私はこれで失礼するよ。南の意図は伝わったろ?教会にも通達があったんじゃないかな?」


「何?」


突きつける太刀を持つ手に力が入る。


「魔女を狩るのさ」


「ふざけるなっ!!」


この発言に怒りを覚えたクリスはジェンの首を斬り落とす一閃を放ったが、同時に南の将軍は闇に同化して消えていた。


「クソっ!!」


陰謀が渦を巻いた謁見の間は、急な静けさに包まれた。


「そうだ…魔女二人を預かったよ」

静寂が低い声で破られた。だが声の主はいない。


「シンディアと…ラナ…?」


ルーシャが呟く。


その言葉に構わず、姿の見えない敵将は言葉を続ける。


「クリス君。まさか君達に会うとは、願ってもなかったよ。そうだ、君達が帝都に来たら魔女二人を返そう。待っているよ、“蒼天”の諸君」


言葉は途切れ、再び静寂が訪れる。


祭の開催に伴う祝福の声が溢れた筈の大広間は、各国の有名人と南の帝国の暗殺部隊の死体の鮮血に染められていた。


生きているのは蒼天の翼と女王ルーシャ、彼女が守り抜いたわずかなゲスト。


王国を護る騎士団でありながらここまで敵の暴挙を許したと言う事実が、クリスに大きな敗北感をもたらした。
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