As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
好敵手




翌日、待ち侘びたインターホンの音に、いち早く駆けつけた。




ドアを開けると、むわっとした夏独特の空気と、微かに蝉の声が聞こえた。




「おはよう、千代っ」



夏らしい半袖のTシャツを着た悠太が、笑顔で言った。



「おはよ」



もう、昨日の弱虫な面影は消えていた。



「もう支度できてるの?」




「うん、ばっちり」



「よし、じゃあ行こっか」



「ん?」



手のひらを差し出してきた。




この手は一体……



「手、貸して」




「い、嫌だよ……」



もしかして、手を繋ぐ気?



「えっ……」



それまでの笑顔が、一気にしゅんとしぼんだ。



「あ、悠太と手を繋ぐのが嫌って訳じゃないんだよ」




「じゃあ、どうして?」




「暑い……から」



手汗かいちゃうし




「なら、我慢する」



出した手を引っ込めて、エレベーターのボタンを押した。




その間に、戸締りをすると、丁度エレベーターが最上階までやってきた。



少しだけ涼しいエレベーターに乗って、エントランスまで出ると、見覚えのある人物が立っている。




「やっほー。あ、仲直りしたんだ〜?」




片耳にピアスを付け、派手な格好のチャラチャラした見た目。



知っての通り、圭くんだ。




「ねぇ千代、なんで圭くんがいるの?」




最悪と言わんばかりの表情で、圭くんを指さした。




「し、知らない」



ぶんぶんと頭横に振った。




「愛しの千代ちゃんを迎えに来たに決まってるじゃんか〜」




「はぁあ……昨日グループトークで千代がレッスンに来るなんて、言うんじゃなかった」



「悠太はさて置いて、千代ちゃんは今日も可愛いね!生足!最高!」




「は、はぁ……」



なんて朝からテンションが高いんだ。




「ちょ、千代の脚見るなー!!この変態!」




「いやぁ、好きな子のことは上から下まで舐めまわすよう見たいじゃんっ?」



へ、変態だ……



「は?何言って_____今『好きな子』って言った?」




「言ったよ?あれ、言ってなかったっけ?」




「え?」




「俺が、千代ちゃんに告白したこと」






「……………………は?」
< 84 / 126 >

この作品をシェア

pagetop