あなたにキスの花束を


引きが悪いはずの私の隣には今、王子様が手を繋いで一緒に歩いてる。

こんな風にときめくのは、学生の時に別れた彼氏以来だ。

繋いだ手から伝わる温もりが、私をとても幸せにしてくれる。

本当の彼氏だったらな、なんて残念に思う気持ちは今は少し置いておいて。

折角引き当てた幸運を、もう少しだけ楽しんでもいいかな。

彼がどこに行こうとしているのかは知らないけれど、永遠に到着しなくてもいいのに、なんて私が思っているのを、彼は気付いていないんだろう。


そんなセンチメンタルな物思いのさなか。

たった今横を通り過ぎたおじちゃんの眼鏡がテンプル傾いて斜めになっているのが気になる私は、間違いなくワーカーホリックだ。

テンプルと呼ばれる弦の部分が傾くと、掛けた時に眼鏡全体が顔に対して斜めに傾き、大変面白おかしい事になる。

工具でちょっと直せば真っ直ぐに掛けられるようになるのにな。
直したいな。うちの店に来ればいいのに。

乙女に徹しきれない眼鏡フェチで、ほんとごめん。

私は何に謝っているのだろうか。







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