あなたにキスの花束を
***





店の中を見渡してまず選ぶのは、私が好きだと思う花。
他に判断基準が無いから、そうさせてもらう。

可愛いけれどしっかり存在を主張するガーベラ。
可憐で清楚でフリルのような花びらのスイートピー。
真っ赤な薔薇にはつい目が行くけれど、ピンクだと愛らしい。
凛と辺りを払うような気高い美しさと言えばカサブランカ。

ああ、挙げていくとキリが無い。

何でもいいって、逆に困る注文だよね。

私は救いを求めるように、私の後をついて歩く司さんに振り向く。



「ねえ、その人、どんな人なんですか。花束のイメージを決めたいから」

「そうだなあ。ひたすら可愛い人」

「他には?」

「少しおっちょこちょいかな」

「他には?」

「明るくて優しくて、笑顔がとても眩しい人」

< 34 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop