あなたにキスの花束を



「俺は、からかったんじゃなくて。少し、君と話したかったんだ。眼鏡屋の店員さんとお客、というんじゃなくて、対等に」

「……」

「君が気付いていないなら、そうしてみようと思ったんだ。どうしてか分かる?」



彼の静かな問い掛けに、私は緩く首を横に振った。

彼がふっと目許を和らげたのが分かる。
何気ないその所作は甘やかで、小さな泣きぼくろがとてもセクシーに見える。



「俺は、自分の気持ちが間違いじゃないって、確かめたかった。君がただ店員さんとして俺に優しくしてくれるのを、自分の都合の良いように誤解してたんじゃないかって。君を勝手に俺の中で、美化してたんじゃないかって」



片桐さんの気持ち?
ああ、私はまたついて行けなくてぽかんとしている。



「でも、俺のために一生懸命に花を選んでくれる君を見て、やっぱり間違いでも思い込みでもないって確信した。君と花を選ぶ時間は、とても愉しかった」


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