そこには、君が







「あ、満月」







レジでお会計を済ませ、


店の外に出ると1番に目に入った。


星がたくさん輝いていて、雲1つない空に、


丸く黄金の月が、こちらを照らしている。


横を見ると大和も同じように空を見上げていて、


すごく意外な一面な気がした。








「お前の顔みたい」






「何それ、どういうこと?」






「まん丸で美味そう」






ムカつく。


私は無言のまま、


買い物袋を持った大和の腕を


全力で殴ってやった。










「明香」






「ん?」







玄関まで送ってくれた大和は、


先を歩く私に声をかけた。


買ったものをくれるのかと思い、


振り向くと、いつになく真剣な表情をしていた。









「1人で平気か?」






こんなに優しい言葉をかけてくれたのは、


いつぶりだろうか。







「うん、平気。もう全然余裕で」







強がっているように聞こえただろうか。


大和は何も言わず私を見つめると、


見透かしているかのような目をして、


ならいい、とそれだけ言った。







「明日ちゃんと話してケジメだけつけるから」






「そうしろ」








さっき買った袋の中から、


私の分の飲み物を手に取ると、


静かに私に持たせてくれた。


おまけに新発売のお菓子も渡してくれて、


いつの間に購入したのかと


買った時を想像して少し笑える。







「明日、あいつと切れたら電話しろ」






すぐに来るから。


大和はそう言い残し、


気怠そうに家に帰って行った。


私は大和の背中を見送ると、


そのまま家に入りベッドへと潜り込んだ。


このまま眠れば静かに明日はやってくる。


きっとこれは、終わりに近付いている。







「終わり、か…」







目を閉じながらそう呟いた。


きっと、終わりに慣れていないから、


こんなに寂しいんだ。


そう自分に刷り込みながら、夢を見た。


私が泣いている夢だった。


泣いてどうしようもなくて、


声も枯れて目が腫れていた。


そして目の前に現れた徹平は、


他の女の人の肩を抱いていた。


それを見て私は、


不思議と笑った。


目が覚めておかしな夢だと思いながら、


もう朝が来たのかと、少し気持ちが落ち込んだ


寝起きだった。









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