そこには、君が






夏休みに突入。


あれから大和とは散々進路の話をし、


1月から住む場所の話もしている。


まだ先の話なのに、


ここがいいとかあそこにしようとか、


ずっと言っている。


8月お盆明け。


今日は待ちに待った旅行の日。


有言実行で、大和は色んな提案をしてくれ、


温泉へ1泊2日で旅行に行くことにした。







「やばい遅れる…っ、」






私の提案で、駅で待ち合わせをすることに。


旅行へ行くのに、同じマンションから、


向かうなんて味気がない気がして。


それにデートらしく、


待ち合わせというものを


経験してみたかった。






「大和!」






駅に到着すると、


一際目立つデカい男が立っていた。


いつも制服か部屋着しかほとんど見ない私は、


私服の大和に、不覚にもときめいた。


大和はオシャレで、色んな服を持っている。


シンプルなんだけど、似合っていて、


言わなかっただけで格好良いとは


ずっと思っていた。


本人には言ってやらないけど。







「お前、遅っせえ」






「2分遅刻なだけじゃない」






「2分も、だろが」






悪態を吐きながら、


自然と私の大きい荷物を


持ってくれる。


自分だって荷物があるくせに、


不器用な優しさを発動させてくれていた。







「楽しみで寝れなかった」






「ガキかよお前。寝んなよ」






なんて言いながら、私をじっと見る。


上から下まで見てくるあたり、


品定めをされているような感じがした。








「変?」






そう聞くと、少し眉間に皺を寄せて。







「絶対俺から離れんな」






そう言って、大きな荷物を全部片手で持ち、


空いた手で私の手を引いた。


足出し過ぎ、とか。


ちょっとは考えろ、とか。


嫉妬深い、彼氏様だ。





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