そこにいた

「おかえり」




そういって病室に入ってきたのは、亮先生。




「どう、気分は?」




「……順調です。」




そう答えるだけで精一杯だった。




先生の方を向くこともできない。




言葉を発するだけで、傷がズキズキと痛む。




「そんなことないくせに。」




と言った瞬間、




「いったーい!!!」



突然、私の足の裏をこしょぐってきたので、私はびっくりして体を動かして、傷がものすごく痛んだ。




「こんなことで痛いなんて、何も順調じゃないんじゃない?」




ひっどい!わかっててやっただなんて……。


「どうしてそんなに無理するの?」




私の顔を覗き込むように聞いてくる。




ウザい……けどそれ以上に、痛い……。




「昨日……武田先生に言ったことも聞いたよ。」




「……。」




亮先生には……全然関係のないことだよ。



「ねぇ。教えて……。



何を思ってるの?」




いちいち人の視界に入ってくる。




そんな亮先生にイライラしてしまう。




手術される前は、こんな風に思わなかったのに。




全く動けないこの状況からか、傷口がずっと痛んでいるせいか……





武田先生にも……亮先生にも……当たってしまう。





「先生には関係ないでしょ!?」




口走ってから、失礼なことを言ったとは思ったけど、本当に関係ないこと。





「あるよ!」





え?





口走ってすぐに返ってくる。




「どうして?」




「綾ちゃんは、僕の大切な患者だ。



それに・・・・・・。」




「それに?」




それ以上は何も言わない亮先生。




一体みんなして何なの?





はっきり言ってよ……。



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