鈍感な君へ

ばあちゃん


あの人、
俺の父親らしき人と
一緒に暮らせと
ばあちゃんが倒れる少し前に
告げられていた



言った直後に倒れたんだけどね…



あの人が、一度俺に直接会いに
来たことがあった



たしか、雨が降ってる日だった





傘を忘れた俺は急いで家に帰ろうと
早足で家に向かっていた





すると目の前に立ちふさがったのが
あの人だった




傘を貸すと言ってくれたのだが
俺は断った




あの人に貸しを作るのが
どうしてもいやだった





――――…




「何のようだ?」





自分でも驚くくらい
低い声が出た




「用がなくては
 実の息子に会っちゃいけないのかい?」




少し笑いながら言うあの人に
腹が立つ




「…っ俺急いでるから」




そう言って横を通り過ぎようと
した時



「――っ」



強い力で腕を引っ張られた
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