イケメン副社長にほだされました


「ーーー沙耶香。」


こんな時にしか私の名前を呼ばない男。
ズルくて、最低な男。
でも、私の好きな男。




「真司。」

「ん?」

「ーーー好きっ…。」



果てる瞬間に呟いた。

でも、やっぱり真司は何も答えてくれないんだね。



火照った頰に一筋の涙が流れる。
真司の背中越しに見えた水槽は、涙でぼやけてまるで下手くそな水彩画みたい。


最後の夜に見た月は、いつかのように大きな満月だった。

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