あたしはそれでもアキが好き

なにも知らない

アキの部屋はとても綺麗に整頓されていた。


黒と白を基調とした家具が、少し冷たくも感じられた。


「どこでも、座って」


アキにそう言われて、あたしはガラステーブルの横に座った。


男の子の部屋に来るなんて初めての事で、緊張してしまう。


しかも、相手はアキだ。


アキはあたしと向かい合うようにして座ってあぐらをかいた。


たったそれだけの日常的な動きなのに、ここがアキの部屋だからか妙に意識してみてしまう。


あたしは目のやり場に困ってしまいフローリングの木目を見つめた。


「美奈は、俺の事どこまで知ってる？」


そう聞かれて、あたしは「え……」と、アキへ視線を戻した。


アキは相変わらずいつもの笑顔を浮かべている。


「アキは……とても優しいと思う」


あたしはそう答えた。


「優しい？」


「うん。学校に住み着いてる野良猫にエサをあげてる所を偶然みかけたから」


あたしがそう言うと、アキは驚いたように目を見開いた。


「そっか、見てたんだ？」


「うん」