あたしはそれでもアキが好き
「はいはい美奈。どうしたんだよ、みんなもうとっくに帰っただろ」


そう言いながらアキはあたしの隣に立ち、靴を履きかえる。


「そうだけど……」


下を向き、あたしはアキの運動靴へ視線をやる。


よく使い込んでいて、所々泥がついて汚れている。


「俺、先に帰るけど?」


そう言うアキの腕を掴み「ダメ」と、一言。


アキは困ったように立ち止まり、あたしを見た。


「あたし……アキの事が好き」


思っていたよりもすんなりと自分の気持ちが口から出ていた。


すごく緊張しているのに、自分の声はハッキリとしていて自分自身も驚いた。


でも、一番驚いたのはアキの反応だった。


アキは一瞬目を大きく見開いて驚いた表情を浮かべ、そして口元を歪めた。


「俺みたいな男女、やめといた方がいいよ」


アキはそれだけ言うと、あたしを置いて帰って行ってしまったのだ。
< 5 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop