♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
新たな事実
次の日の、一月二十二日、水曜日。春子は教室で月山美加とお弁当を一緒に食べながら、かるたの話題で盛り上がっていた。

そして頃合いを見計らって、春子は、礼士に言われた通り、谷本亮について美加に聞き出しをする事にした。

それによって、春子は美加から意外な事実を知る事になった。

「…ところでさあ、月山さんがかるたの腕前がすごいのは分かるけれど、そのお相手を毎日している谷本さんも、大したものね」

「大したもの、どころじゃあないわ。

…実際、私よりも強いもの、谷本君」


「えっ?で、でも今回の大会は、部内で一番強い人が当然出場…」

春子がそこまで言うと、美加は少し神妙な面持ちでふうっと一息吐くと、静かに答えた。

「…本当は、谷本君が今大会に出る予定だったの。

ほら、私ってこの学校に去年の秋頃に転校してきたでしょ?

その頃すでに、谷本君はかるた部一の実力者だった。

でも、谷本君が私に譲ってくれたのよ、大会に参加する権利を」

「譲った?大会に参加する権利を?何故⁉︎」

「…分からない。私がかるた部に入った当初は谷本君、今みたいに親しみある感じじゃあなくって、むしろとっつきにくいというか、いつもピリピリした雰囲気を作る人だった。

しかも、私がそこそこかるたが出来るって分かってからは、大会の出場権利を奪われるんじゃあないかって思ったのか、私の事をライバル視していたぐらいだったから。

だから、自ら大会の出場権利を私に譲ってくれた時には、正直面食らったわ」

「じゃあ、大会の出場権利をかけて戦わなかったの?」

「…いいえ、戦ったわ。しかも向こうからの申し出でね。

確かあれは、十月の終わり頃だったかしら。

試合は、常に八枚差ぐらい開けられた状態で谷本君が圧倒的優位だった」

「つ、月山さん相手に八枚差って…

ど、どんだけ彼強いのよ!(◎_◎;)」

「だから今でも不思議に思うの、私が、取り札残り数枚で逆転ならずが確定した瞬間で、いきなり谷本君が私に頭を下げて、私に大会出場権利を譲ってきたの。

私の方が、大会出場選手にふさわしいから、って」

美加の話を聞いて、春子はう〜んとうなった。

今の話からだと、まだまだ谷本亮犯人説の決め手としては全くと言っていいほど弱いが、ただ、谷本亮という個人としては、何か得体の知れないものが感じられ、逆に春子は谷本亮に興味を持った。

その日の放課後、奇術同好会の室内で、春子は礼士に美加から聞き出してきた内容を伝えた。

「…変わってるね、彼。

せっかくの大会出場権利を…」

「変わってるどころじゃあないですよ、礼士先輩。

何か、こう、人が突然変わってしまったかのような…

月山さんが言うには、初めて出会った頃は、人を寄せ付けない雰囲気を常に出しているような人だったらしいですから」

「…怪しい、うん、やっぱり怪しい。

何か持ってるよ、彼は。これから起ころうとしている事件に関する情報を」

「でも、これからどうしましょう、礼士先輩?」

「そうだなあ…刑事みたいに張り込む訳にもいかないし、かと言って、このまま事件当日まで何もしないで待つ事も出来ないし…」

「…とりあえず、いつもの喫茶店に行きませんか?

場所を変えれば、何かいい案が思い浮かぶかも知れませんし」

「う〜ん、そうだね。

しかし、何だな。毎回こんな事で貴重な青春時代を費やしてるのって、僕達以外にいるだろうか?

くっそ〜!吸血奇術師め!よくまあ、毎度毎度、僕達にこんな妙な嫌がらせを思いつくもんだ。

ねえ、ハルちゃん!」

「(。-_-。)…」
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