♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
本当の敵
「そう言えば谷本さん、社殿の前で、こうも言っていたわ。

『勘違いしないでくれ、これは君の名誉を回復する為の戦いだ』って。

『単なる復讐じゃあない』って」

それを聞いて、ああ、そう言えば、と、礼士はこめかみ辺りを人差し指でぽりぽりかきながら、春子に言った。

「でも、復讐に単なるもくそもないと思うんだけれど。

一体、彼は何をしようとしているのか…」

(そう、礼士先輩のいう通り、一体あなたは何をしようとしているの?

単なる復讐じゃあないって…

あなたの言う、城田さんの名誉を回復する戦いって…)

二人は、再度明日起きようとしている事件について調べた。考えた。

だが、それ以上何も得る事もなく、もやもやした気持ちのまま家路につく事になった。

その日の夜。パジャマ姿の春子は、自分の机の上に向かって、ヴァンパイア礼士からの挑戦状とにらめっこしていた。

「困った時は、とにかく原点に戻る事。

私達が気付いていない何かが、そこにある。

…そうだ。書いた文章をチェックする時、声に出して読み上げてみると、音の響きでおかしな部分はやはりおかしいと分かるもの。

…早速、試してみましょう」

そして春子は、その挑戦状を声に出して、何度か繰り返し読み上げてみた。

「…あらっ?」

初めの内は、特別何も思う所がなかった春子だったが、何度も声に出している内に、ふと、この挑戦状に書かれてある、とある部分が不自然である事に気付いた。

そこで春子は、試しに今まで明日起きようとしている事件について調べてきた内容をもとに、別の紙に、明日谷本亮がやろうとしている挑戦状の内容を再構成してみた。

「…そうよ、そう、明らかに変だわこの部分。

もし、今回谷本さんがやろうとしている事が、たえ子さんに対する復讐だけだと考えるなら、これはあり得ない。

…もしかしたら私達は、復讐、というキーワードにばかり振り回され過ぎているから、明日起きようとしている事件の真相に、いつまでたってもたどり着けないんじゃあ…」

春子は、慌ただしくスマートフォンをいじり、礼士に連絡を取った。

「…どうしたの、こんな遅くに?」

「夜分遅くすみません。今、挑戦状の内容を、今まで私達が得た情報をもとに再構成してみたんですが、ある部分が、非常に奇妙だという事に気付いたんです」

そう言って、春子が礼士に伝えた再構成した挑戦状の内容とは、以下のものであった。

◎谷本亮は、明日の全学年集会の持ち物検査で、多野たえ子の持ち物からタバコが発見されるように仕組もうとしている

◎上記の作戦が失敗した時は、谷本亮自らの持ち物から、タバコが発見される事による、連帯責任を引き起こそうとしている

◎もし、私と礼士先輩が第三の結末にたどり着けば、吸血奇術師からこの事件の真の結末に結びつけるあるアイテムをもらえる事になっている

これを使用する事は、谷本亮にも了承は得てある

「…この文章において、何かおかしいと感じる所はありませんか?」
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