囚われた瞳【琴子さんanother story】番外編2UP

夢の中

晴が日本に帰国して、三週間が経った。

体力も戻って来たみたいで、今週に入ってから、ジョギングや筋トレを始めてる。

知らなかったけど、今までもジムには通っていて、筋トレは欠かさなかったらしい。

そうだよね、筋肉付けないと、重いカメラ機材とか持つの大変だもんね…



「おい、桜の王子が来てるぞ」

晴が、桜を背に現れたと話して以来、永岡さんは、晴のことを『桜の王子』と呼ぶ。

たしかに、晴は王子様みたいにキラキラしてると思うけど、事あるごとに『桜の王子』なんて言われると、感動的な思い出が、汚されるような気分になる。

話すんじゃなかったと、後悔し始めている。

プクッ…

「あっれーー?なんで不機嫌?桜の王子が来てんのに。そんな不細工面してると、振られるぞ〜」

カッチーーン!

るさい!うるさい!うるさーーい!

「行ってきます!」

ガシッと鞄をつかんで立ち上がる。

そんな私の後ろ姿を、永岡さんは

「いってらっしゃーーい。お幸せに〜」

なんて、ヒラヒラ手を振っている。

その様子を、編集部の奥の席から見守る岬編集長。

元どおりの日常が戻って来た。

「晴!お待たせ…」

柱にもたれてた晴が、柔らかく微笑む。

「結衣、行こう」





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