囚われた瞳【琴子さんanother story】番外編2UP

あふれる想い

数日後のよく晴れた午後、荻野君と私は、三宝寺池を並んで見ている。

「来月の終わり頃から、この池一面にスイレンが咲き乱れて、すごく綺麗なんです。

これ…昨年の写真なんですけど…」

と言って、昨年の7月に撮った三宝寺池を見せてくれる。

「わあっ!凄い…」

見せてくれた写真には、池全体が白いスイレンに覆われている。

この上を、ピョンピョンと跳ねて向こう岸まで行けそうだ。

「…青山さん、スイレンの上に乗っちゃダメですよ」

へっ?心の声が漏れていたらしく、荻野君が遠慮がちに注意してくれる。

「の、乗らないよ?天然記念物だし!」

慌てて言い訳する。

「えーー?そこ?天然記念物でなくても、スイレン自体には乗れないからね?」

「し、知ってるよ?」

じつは乗ってみたかったんだ。残念…


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