虹色ファインダー
・涙色

奏次郎はさっきまで腕の中に収めていた女性に、私のことを紹介した。


「こいつ、写真部なんだって。ここで仲良くなったんだ」

「松本綾香です……はじめまして」


私は精一杯さりげなく微笑んで見せた。
だけど笑顔を作るのは得意じゃない。

その人、あかりさんは私とは違って凄く自然に笑う。

奏次郎はその隣で、凄く優しい顔をしていた。


「俺、あかりと賭けをしてたんだ」

「賭け?」

「俺にずっと着いて来る覚悟があるなら、個展の期間中に会いに来いって」


あかりさん、覚悟したんだ。
奏次郎はここを離れるんだね、あかりさんを連れて。
< 41 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop