恋する想いを文字にのせて…
12通目……ホワイトに想いをのせて
『親愛なるアナタヘ、先日はどうもありがとうございました。

津軽先生にお会いできたこと、この上無い幸せだったと実感しております。

もう一度、きちんとお礼が言いたく筆をとらせて頂きました。

小野寺さんには今更だと思われてしまうかもしれませんが……。』


文末の文字が滲んでいた。
涙と共に書かれた手紙には、同じような箇所が所々に見受けられた。



『……あの時、嘘をついてしまったことを訂正しておこうと思います。


読む気が無ければ、この時点で処分して頂いても構いません。


…むしろ、そうされた方がいいのかもしれない。


私にとっても、貴方にとってもーーー』



長い行間が空けられていた。
紙を後ろに回して読み進める先に、津軽先生が話していた男との生活が書かれてあった。


『……私が結婚していると言った人は、故郷の書道教室で講師を務めていた人でした。

書道家という名の下に定職にも就かずにいる彼を、両親も兄も親戚の者達も「つまらない男だ」と言って認めてはくれませんでした。

実家は古くからの作り酒屋を営んでおり、杜氏の方達でさえも彼を偏見の眼差しでしか見てくれなかった……。


私達は故郷を捨てて都内で一緒に暮らし始めました。

当時の私は、彼との恋に舞い上がり過ぎていて、その本質をしっかり見極めようとはしなかった。

いつか必ず大成する人だと信じて、必死で自分が働き生活を支える毎日でした。


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