恋する想いを文字にのせて…
『失言でした……』


3枚目の冒頭に書かれた反省の言葉に目を落としながら、もどかしさや怒りを受け止めた。

彼女の字はその後、少しの間だけ乱れた様子もなく並んでいた。



『ーー幸いなことに、今は小学校の保健師さんが時々息子を預かって下さるので助かっています。

小野寺さんに初めてお会いした時も、『リフレッシュなさって下さい』と言って預かって下さいました。

だから、前日の夜、ホテルに泊まることもできたのです……。



…でも、甘えていられるのも今のうちだけです。

小学校に通っている間は、そうして助けて下さる方もいる。

けれど、いずれは息子も大きくなり、今以上の混乱時期を迎えることになると思うのです。


その時、私には頼れる人はいません。

血の繋がりのない方に障害のある我が子を理解して頂き、依頼することなどできないのです。



悩んでいる折に母から手紙が送られてきました。

興信所を通して、私の居場所を突き止めたとのことでした。


『帰っておいで……』と短い内容の文章が添えられてありました。

文字の乱れに、確実に歳を重ねてきているであろう母の姿を思い描きました。


……二度と足を向けられないと思っていた故郷から届いた便りに、心が折れてしまった………。

丁度いい具合に、津軽先生のセレクトブックを読みながら、この間話した最高傑作の漫画を思い出したばかりでした。


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