恋する想いを文字にのせて…
読み返しながら何度も「馬鹿だ…」と独り言を吐きました。


社内で手紙を読む時はいつも、独りになれる場所を探しました。


貴女からの手紙に浸る為、孤独になれる時間が欲しかったからです。



そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、貴女が会いたいと望まれたのは津軽芽衣子で、僕ではない。

こんなにも貴女に恋い焦がれている僕に、「会いたい…」とは一言も書かれていない。



どれだけショックを受けたか想像もできないだろうと思います。

それは僕自身の気持ちの問題なので、貴女の考えが及ぶ筈はありません。


当たり前なことなのです。

きっと、僕の方が間違いなんです。



……でも、僕は貴女に会いたいと願っています。

津軽先生とのアポを取って差し上げる代わりでもいいから、一目会ってお話がしてみたい。



……僕と会っては頂けないでしょうか?

アポが取れたかどうかも、その時にお話ししたいと思います。



よく考えてお返事を下さい。

そして、この手紙を読まれた後、僕と同じように茫然となさってみればいい。


そうなることを心の何処かで望んでいる馬鹿者がいると思いながら、深く悩んでみて下さい。




最上来未さん

どうかお会いできる日を楽しみにしております。

都内のオフィスビルで、貴女からの手紙が届く日を心静かに待っています。



寒くなってまいりましたので、どうかお体だけは気をつけて。


また貴女の美しい文字に出会えることを心から願っています…。


小野寺 漠』




< 22 / 179 >

この作品をシェア

pagetop