恋する想いを文字にのせて…
「急ぎましょう…!」と前を歩きだした。

その小さな背中を追いかけながら、まるで少女のような軽やかさに驚いた。



「来未さんは意外と足が速いんだね」


小走りの様な歩き方を褒めると、彼女はいきなり速度を落とし始めた。


「すみません。つい、いつもの習慣で……」


「いつも?いつもこんなスピードで歩いてるの?」


質問する内容がいけなかったのか、彼女は「ええ…」と一言言ったきり黙り込んだ。


この間初めて会った時と同じ気持ちが支配する。


彼女はどうも自分の生活に関することは極力話したくないらしい。

ある種秘密めいたような雰囲気が立ち込めていて、それを無理に開くと退けられそうな気がする。


何も聞かないでいてやることの方がいいと思う。

その方が、きっと俺たちの為にもなるんだろう。


でも………



(俺はこの人のことを全部知りたい……。何があったにしても受け止めてみたい………)



小さな背中を抱きしめてやりたいような気に襲われた。

強がっている様な彼女のことを抱き留めて、甘えてみて欲しい…と伝えたい。

けれど………



「小野寺さん、着きますよ!」


振り返って笑う人は朗らかだった。

強そうに見せたいと願う彼女の姿が、そこにあるようだった。



「待って下さい。チャイムは俺が鳴らしますから!」



走り寄る胸のうちには、彼女への想いが溢れそうになっていた。


今日こそはその想いを伝えるんだ…と、誓いながら家屋へと近づいたーーー。





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