恋する想いを文字にのせて…
「ですよね…」


小さな独り言を漏らす。

予想通りではあった展開に、またしても小さな笑いが起きた。



『今回の手紙も大変素晴らしかったです。私の送ったスカイブルーの手紙を見て青春時代を思い出して頂けるなんて、考えもしておりませんでした。

〈高校時代に見た夏空と同じ色〉と書かれた文字を、幾度読み返したか分かりません。

…実は、あのレターセットを目にした時、私も同じ様に夏の景色を思い浮かべたからです。


ジージーとうるさい真夏の蟬時雨、背の高い向日葵の花、麦わら帽子、ビーチパラソルに白い雲。


どれもこれも、夏空に映えて美しかったな…と思いました。

その考えと同じ気持ちを貴女様が持って下さったと知り、これまた早速お便りせねば…と鉛筆を手にしました。


4Bという濃さの為、もしかしたら読み辛さを与えてしまうかもしれないけれど、どうかご容赦下さい。

仕事柄ペンを持つのには慣れていても長々と文字を書き綴ることは減った分、どうしても手が痛くなってしまうのです。


…こう書くと笑われてしまうかもしれませんが、これが事実だから致し方ありません。


なるべく読みやすい様に行間を空けて書かせて頂こうと思います。


貴女様の様に美しい文字にはならないと思いますがーーー』




「褒め過ぎよぉ…」


相変わらずな称賛ぶりに恐縮するのは自分の方。

こんな風に褒められるとまたお便りしたくなってしまうじゃないの…と思いながら先を読んだ。



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