Pathological love

最後の方は消え入りそうな声で、あのどんな時も冷徹で気丈な母親が顔を覆って俯いている。

泣いている?

そう思った瞬間、俺の心は震え出した。


「許してくれる訳ないわよね?…………あの時の幼かったあなたに私は残酷な仕打ちをしてしまったわ…………でも、……でも謝らせて……あの時からずっと……後悔してるの……ごめんなさい……。」


「……母さん……。」


初めて母親が泣く姿を見て、俺の前の絶対無くならないと思っていた、見えない壁が崩れ去って行くのが見えた。

強がりと、意地と、憎しみと、寂しさと、愛しさとそんな色んな思いで作られた俺の心の壁は彼女の涙によって呆気なく洗い流されて浄化して行く。

こんな事で許せるのか?

ポタポタと止めどなく落ちている自分の涙が、その問の答えに違いない。


「……うぅ…………連……理ごめんね…………母さんが悪かったの……ごめっ……ごめんなさっ……」


「なんで……謝るんだよ!……なん……で……今更そんな事……俺は、俺はあの時受け入れて欲しかった……のに……ただ、俺を見て……うぅっ……笑って欲しかっただけなのに…………!!」


俺は溢れてくる涙を止められなかった。

ずっとずっと溜め込んできた所為か、俺は小さな子供の様に泣きじゃくっていた。

情けなくぐちゃぐちゃの顔で泣き、大声で愛してくれなかった不満を叫んでいた。

俯く俺の肩が温かい腕に包まれる。

ずっと待っていた手だった……。


「ごめんね……連理……あなたは私の子よ…………もう1度私を母親にしてくれる?」


「うぁ……うああぁぁ…………」


俺は言葉にならなくて、一度だけ深く頷いて応えた。


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