2番目じゃなくて、2度目の恋


テーブルの向こうでまだゴチャゴチャと話している叔父を無視し、黙々と手元にある寿司を口に運んだ。


そんな俺に、従姉妹の真理絵が話しかけてきた。


「なになに、ほんとに喧嘩中?」


彼女は叔父の娘で、叔父に似ておせっかいだ。
でも5つ年上ということもあり、小さい頃からよく面倒を見てもらったし、すでに結婚して子供も2人いて、人生の先輩と言っても過言ではない。


真理絵にどこまで話そうかと迷っているうちに、彼女の脳内で勝手に俺と佑梨は喧嘩しているんだと判断されてしまったらしく、彼女は悟ったような微笑みを向けてきた。


「あら〜図星ね?それならどっちが悪くても男のあんたから謝らないとダメよ。女はキッカケを待ってるんだから」


あれ、なんかそれに似たようなアドバイスを前にも聞いたような。
なんだっけ。


記憶を掘り起こすより先に、俺は真理絵に聞き返した。


「キッカケ?」

「そ。女って勢い余って自分の言いたいこと言ったあとに、冷静になって後悔するのよ。それで、仲直りしたいけど文句を言った手前素直になれない。きっと彼女もそうなのよ。だから謝るのは弘人じゃないとダメ。分かった?」

「……そもそも喧嘩してないんだけど」

「え?なに?…………あ、そっかぁ。あんた彼女出来たの初めてだもんね!分かんないことばっかよねぇ。大丈夫、言われた通りにすれば仲直り出来るから!」


人の話を全然聞いてないな、この親子は。
ポジティブっていうか、都合悪いところだけ何故か聞こえない不思議な耳。


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