2番目じゃなくて、2度目の恋
ピンポーン、という音が部屋に響いた。
その瞬間、落ち着きかけていた胸の鼓動が早鐘のようにドクドクと打ち始めた。
リビングを出て、狭い廊下を通り玄関へ向かう。
玄関のドアの向こうに、人の気配。
きっと弘人だ。
でも、念のため。
「どちら様ですか?」
「望月です」
そりゃそうだよね。
用心深い自分が情けなくなりながらも、ドアのチェーンを外して鍵を開ける。
すると、私よりも先に弘人がドアを開けた。
モワッとした夏の湿気の多い空気が差し込んでくる。
それと共に、久しぶりに見る弘人の姿があった。
「こんな時間に、ごめん」
彼は自分でドアを開けておいて、なかなか中に入ってこようとしない。
むしろなんだか気まずそうな顔をして私を見ている。
1ヶ月以上振りに見る彼は前と何も変わっていなくて、でも仕事終わりなのか少しだけ疲れているような印象を受けた。
とりあえず、立ち話もなんだし。
玄関のスペースを空けて、探りを入れる。
「ううん。中に入る……?」
「入ってもいいのなら」
「…………いいよ」
なによ、その言い方。
どうしてそんな風に言うんだろう。
少し考えて、その答えはすぐに出た。
最後に会った時、そういえば私は彼を部屋に上げなかった。
玄関でドアを少しだけ開けて、顔を隠すように彼と話をしたのだった。
だから弘人は私が迷惑に感じているのだと思って、そういう言い方をしてきたんだろう。