今すぐぎゅっと、だきしめて。
あたし、きっと真っ赤だ。
だって
耳まで熱いもの。
お願い、どうか
この夜に紛れてあたしの頬の火照りも一緒に隠して。
そう願いながら
あたしはヒロを見上げた。
「…………」
あ、れ?
あたしはヒロを見上げたまま
固まった。
ポカンと口をあけたままのマヌケ面のあたしを見てヒロはなんとも複雑そうな顔をした。
「……和田くん……」
モゴモゴと口にしたあたしは、彼からずるずると離れた。
だって、確かにヒロだと思ったのに
見上げた先は、やっぱり和田君で。
少しだけ「本物」の生身のヒロだなんて錯覚してしまった自分が恥ずかしくて。
あたしはまるで金魚のように口をパクパクと動かした。
そんなあたしに、和田君の体に入った「ヒロ」は困ったように笑うと、ほんの少し口元を緩めた。
ドキン……
目の前に居るのは「和田君」なのに
今、ヒロの顔がだぶって見えたよ?
だからかな……
その余裕の笑みにどうしよもなくあたしの体は熱くなる。
「俺ね?」
「……ん」
月を背後に従えて「ヒロ」はあたしの顔を覗き込んだ。
恥ずかしくて……
目を合わせられなくて俯いてたのに。
腰を落としたヒロと簡単に視線がぶつかってしまった。
「!」
ボボボ!
なになに?
そんなあたしを見て
ヒロはさらに口角を吊り上げた。
ううぅ……
ますます動揺しちゃう。
和田君なのに
和田君なのに
それでもやっぱり
ヒロなんだもん…………