今すぐぎゅっと、だきしめて。
忘れ去られた記憶



―――――………
――……





ヒロは、


目を覚まさない。





「……やっぱダメか」


そりゃそうだよね。

だって、あたしにそんな力があったなんてやっぱり信じられないもん。


あたしは、「はぁ」と小さく溜息をこぼすと、そっと体を起こした。



ピクリとも動かないヒロから、思わず視線をそらして顔を上げた。

見上げた先には、どこまでも続いていきそうな青い空。


夏休みも残すところあと3日。



もう、あたしの中学生活もあと少しになった。


夏休みが終わったら、最後の学園祭に体育大会とかで忙しくて。
そしたらすぐに受験が来て。

卒業して、みんな離れ離れになっちゃうんだな。



「……ここにも、きっと来られない」



そうだよ。

ちぃちゃんと言う人がありながら、あたしが顔を出すことなんてそう出来る事じゃないんだ。


おかしいもんね。


繋がり……ないもの。




窓から吹き抜ける風に、ほんの少しだけ秋の気配を感じる。

肩まで伸びた髪が、その風にのって頬をくすぐる。

唇に触れた髪を払いながら、あたしはヒロに視線を落とした。


「ヒロ、あたし……行くね?」


そう呟いてみて、あたしの意思とは関係なく声が震えた。



もう帰ろう。
そして、ここには来ないでおこう。


だって、あたしの役目はもう終わったんだから。


< 171 / 334 >

この作品をシェア

pagetop