今すぐぎゅっと、だきしめて。



「な、なに言ってんの。
あたし怒ってなんかないよ」


「でも、あたし……裕にぃがユイに何を言いたかったのか知ってたんだよ?」


「え?」


キョトンとするあたしを見て、奈々子はキュッと唇を噛んだ。



「知ってたの。 永瀬ヒロ……真尋について聞きたがってた。 あたし、裕にぃが千紗さんの事好きなの知ってたんだ。 
だから……ユイの力になりたかった。 ユイの想いが少しでも永瀬真尋に届けばいいって……だからあんなマネした……。
マジ、ごめん!
ユイにとっては、迷惑だったでしょ?ほんっとにごめんっ」


「奈々子……」





そうだったんだ……。



あたしがヒロを好きなの知ってる奈々子。


その気持ち、すごく嬉しい。




「許さない」

「え」





驚いて顔を上げた奈々子。


あたしはその奈々子に飛びついた。





「謝るなんて許さないからっ!」

「……ユイ」






泣きそうだった。



ヒロへの想いとか。
ちぃちゃんの想いとか。

みんなの想いとか。



どうして
うまくいかないんだろう?
どうして
大切な人は1人なんだろう?





ぜんぶひっくるめて、涙を流すことでリセットできたらいいのに。




そして。

またイチから。




そう想うのに。
そうできたらって。



だけど……。
気づいちゃった。


それでもあたしは……




――――……ヒロが好きなんだって。



< 202 / 334 >

この作品をシェア

pagetop