今すぐぎゅっと、だきしめて。
オレンジの言葉


「行ってきまーす」



玄関を出たあたしの足元に、落ち葉が舞い降りた。



ふと見上げると、庭先のポプラの木はいつのまにか緑の葉をハラハラと落としていた。



少しだけ伸びた髪を、肌寒い風がいたずらに揺らす。
横に流していた前髪が乱れて、あたしは手でそれを抑えた。


季節は秋本番。


週末に行われる学祭の準備で、あたしはいつもより早く学校に向かっていた。






「……」





葉を落とすポプラの木から視線を落として、お隣に目を向けた。

あれから、2ヶ月たつ頃だろうか。



ちぃちゃんの家には行っていない。
もちろんヒロにも会ってなし、考えないようにもしてきた。


だけど、こうしてふとした瞬間に、いつも心の片隅に浮かぶ笑顔が。
今でもあたしを締め付けていた。



ちゃんと考えて決めたんだ。

ヒロと、ちぃちゃんが幸せになる方法。

あたしが、2人の間に入ることで、ヒロの記憶が揺らがないように。




思い出さないように……。






決めたの。






だから





会わない。








< 223 / 334 >

この作品をシェア

pagetop