今すぐぎゅっと、だきしめて。

その時、あたし達の背後に人の気配。

ハッとして振り返ると。



「……あにしてんの? 俺の靴取れないんだけどぉ」

「だ、大樹……おはよ」

「いるなら、こ、声かけてよね!」



ジトーッと目を細めた大樹が、あたしと奈々子を交互に見た。


勘のいい奈々子も、さすがに驚いた様子で、大樹を小突いた。



「うっせ。 そんなとこでぼーっと突っ立てる方が悪いの。 で? なんだよそれ」


「へッ!?」



いきなりにゅっと伸びてき腕が、あたしの手元から手紙をスッと抜き取ってしまった。



「ちょッ、なにすんの! 返してッ」

「いいだろ、別に~。 てか、ユイはちびだなあ」

「は? ふざけてないでほんとに返してッ」



手を上にあげてしまった大樹。
あたしがいくら飛び跳ねても届くわけない。




「んだよー、エロいもんなの?…………」




それでも必死に手を伸ばすあたしを見下ろして、なんとも楽しそうに笑うと大樹はくるりと向きを変えて手紙に視線を落とした。




「大樹と一緒にすんな! もお、ほんといい加減に……」





また背伸びた?

あたしは大樹の腕をつかんで、引き寄せた。




「……今日の放課後、屋上にて……ってなにこれ」


「…………だ、大樹?」



だけど。

振り返った大樹は、全然笑ってなくて。

むしろものすごーく怒ってて……。





怒ってて?




「……ぶはッ!」




は?




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