今すぐぎゅっと、だきしめて。
瞳にうつして
駅まで向かう商店街では、クリスマスのイルミネーションが、まるで宝石みたいにキラキラと光輝いていた。
それを横目に、あたしはグルグルに巻いたマフラーで、口を覆った。
今日は特別な日。
恋人達の聖なる夜だ。
よく聴く、クリスマスソングが商店街をいつもより盛り上げていた。
周りをみると、確かにカップルが多い。
……誰が決めたのよー。
こんな日!
あたしは足早に1人寂しく、スクランブル交差点を横切りながら溜息をついた。
だいたい、受験生にとって、クリスマスもお正月もないようなもんなんだよね!
はあ、あと1ヶ月後には試験だよー……。
幸せそうな街の雰囲気とはまるで正反対の、あたしの顔。
お気に入りのブーツを睨みながら、ふと顔を上げる。
そこに、目的の場所が見えてきて、なんだかホッとしてショルダーバッグを肩にかけなおした。
色とりどりのネオン。
自動ドアに吸い込まれるように足を踏み入れる。
えーと。 102号室はー……
あった。
建物の、1番奥の部屋。
ガラス張りのドアを覗き込むと、すでに数人がそこにいた。
と、そこに。
「邪魔なんですけどぉ」
「へっ?」
なんとも不愉快な声が。
ジトーっと振り返ると、両手にコップいっぱいのジュースを持った水谷が立っていた。