今すぐぎゅっと、だきしめて。
リスタート
 

それからあっという間に年が明けて、お正月を田舎のおばあちゃんちで過ごしていた。


うちからは新幹線で2時間の距離にある。

だから滅多に行けないんだ。



おばあちゃんが生きてる時は、もっと頻繁に行き来していた気がするけど。
おばあちゃんが亡くなってからは、お盆休みと、お正月に来るくらいで。

だけど、今年はお盆休みに帰れなくて。
だからすごく久しぶりな気がした。



おばあちゃん……
あたしね? 今年の夏は大変だったんだよ?


シンシンと降る雪は、静かで。
耳鳴りがしそうな程だった。





「ユイ、そんなとこにいたら風邪引くよ?」


「……おじさん」




縁側に座って、庭に積もる雪を眺めていたあたしに、居間の襖を開けておじさんが顔を出した。


暖かな空気と、賑やかな声に包まれる。


今、このうちにはお父さんのお兄さんが住んでいて。
もう48歳になるけど、結婚はしてなくて。
切れ長の瞳に、あごひげを生やしてるおじさんはとても40代には見えない。

垂れ目のお父さんとはあんまり似てないんだよな。
あ、でもおばあちゃんに似てるのかも。
そういえばとよく見ると、若い頃のおばあちゃんに面影があった。


おじさんは、おばあちゃんがいたこの家を守ってくれてるんだ。



だからかな。
なんにも変わってない。


あの頃のままだ。





「なんだ、その顔は。 悩み事か?勉強、サボってんだろ」



薄着のおじさんは、寒そうに身を縮めるとあたしの隣に腰を落とした。




「んーん。 ……ってか、狙ってる高校も少しレベル高くて……。 でも家から通える距離がいいし。 それに……」




それに……。
あたしは、ナースになりたい。


ヒロみたいな人を助けたい。


そのために勉強したいって、そう思えるようになった。



だから、今もリュックの中にはちゃんと参考書を持ち歩いてる。

頑張るって決めたから。




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