強引上司と過保護な社内恋愛!?
「あれは…佑樹くんが勝手に…」

私はモゴモゴ口籠る。

「言ったろ?あの小僧に泉はまだ早い」

桧山さんは俯く私の顎に指を添えて上を向かせる。そのまま短いキスをした。

「だから他所見しないで待っててよ」

鼻先で見つめ合いながら桧山さんはメチャクチャ小さい声で呟いた。

私は頷く代わりに桧山さんの頬に手を当てて自ら唇を塞ぐ。

ふっくらとした唇の感触を味わうように何度も何度もキスをした。

離れていても忘れないように―――


人目を憚らずイチャついていたため、桧山さんはファイナルコールで呼び出されることとなる。

「じゃあ!泉!達者でな!連絡する!」

そういって桧山さんは出国ゲートへと走り去って行った。

何だかムードに欠ける慌ただしい出発だった。

桧山さんの乗るNH885便が飛び立つのを出発ロビーから見送って私は空港を後にする。


…あ、携帯番号聞くの忘れた。

それに気付いたのは帰りの電車。

時既に遅し。

でも大丈夫。きっと桧山さんは電話をしてくれるだろう…多分。

些かの不安を残し私は家路についた。
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