強引上司と過保護な社内恋愛!?
13. 【番外編】兄さんブタの憂鬱
初恋の人は、小学校から習い続けているピアノの先生だった。

「肇くん、時間があるなら私の部屋に寄って行かない?チャイコフスキーの手稿譜が手に入ったの。ファクシミリ版だけど」

俺が中学生になったある日、先生が言った。

「是非…拝見したいです」

本当に見てみたいのは楽譜ではなく先生を部屋なんだけど。

教室の二階にある先生の部屋は、一歩中へ入るとふんわりと甘い香りがした。

家族以外の女性の部屋に入るなんて、初めての事だったので、キンチョーしてしまう。

小花が散りばめられた壁紙にサーモンピンクのカーテンが掛けられていて、家具は白で統一されている。

イメージ通りの女性らしい清潔な部屋だった。

先生は棚からえび茶色の皮の表紙がついた1冊のファイルを取り出す。

「こっちに来て一緒に見よう」

先生はカーテンと同じサーモンピンクのカバーが掛けられたベッドの上に腰掛ける。

春期真っ只中の俺は、女性+ベッドという組合せだけで、不謹慎にもドキドキしてしまう。

落ち着け…おちつくんだ俺!!

変に意識しているのがバレたら、先生にいやらしいガキだと思われる。

「どうしたの?」

先生が小首を傾げると、ブラウンの髪がさらりと揺れる。

「いえ、何でもありません」

ズレた眼鏡を中指で押し上げる。

動揺をひた隠し、俺は先生の隣に座り皮のファイルを覗き込む。
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