強引上司と過保護な社内恋愛!?
「ありがとうございます。美嶋建設営業本部田母神です」

『ああ、いずみん?小日向だけど』

受話器の向こうからいつもよりテンション低めな木彫りの声が聞こえてきた。

「おはようございます。小日向さん今日はどうされました?」

『実は…小日向家が全滅した』

木彫りの声が一気に沈んだ。

話しを聞くところによると、一昨日嫁と娘2人が外食した際に食した鮮魚のカルパッチョがあたって、小日向さん以外の家族が全員ダウンしているらしい。

恐らくロタウィルスではないかと小日向さんは踏んでいる。

『家族を看病するから、今日は有給を取ろうと思う』

…それは結構なんですが。

「今日の営業会議はどうするつもりですか?」

小日向さんは暫し沈黙する。

きっと忘れていたに違いない。

『桧山に代理で出席してもらうよ』

「今日は直行です」

『じゃあ伊藤!』

「福岡に出張中です。松井課長も伊藤さんに同行して不在です」

先手を打って釘をブッ刺すと、小日向さんは再び沈黙する。

「たもが…」

「嫌です」

最後まで言う前にお断りする。
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